はじめに

ラストランは、夫の闘病生活を綴った手記です。平成13年11月、胸腺腫末期と告知されてから、再発を繰り返し、放射線治療中の平成15年7月、当初からT型リンパ芽球性リンパ腫であったと病名変更されました。

この3年に及ぶ闘病中、多くの人々の温かさに励まされ、「生きる」勇気をいただきました。患者さんやNPO法人の皆さんのアドバイスがどれほど私たちを励ましてくれたことでしょう。インターネット上の患者さんの情報や闘病記に、どれほど力づけられたことでしょう。

夫を亡くした今、患者が発信する情報の必要性をひしひしと感じています。この本を執筆した動機も、患者家族であった私の体験が、がんで苦しむ患者さんや家族のアドバイスになればと考えたからです。

不治の病だといわれた血液がんが高い治癒率を誇るようになった現代でさえ、やはり、病魔との闘いは壮絶です。いや、西洋医学が目覚しい発展を遂げた今だからこそ、患者にとってどんな治療法が適正なのか、判断しきれない時代であるともいえます。

今やがんは他人事ではありません。こうした時代だからこそ、患者のそして家族の声を一人でも多くの患者さんたちに届け、自らの闘病生活の参考のひとつにしてもらえたらと願っています。
 夫と私が多くの人々に支えられたように……。

大原 純子